沖縄の餅菓子といえばカーサムーチ。月桃の葉やクバの葉で餅をくるんで蒸した邪気を祓う為の伝統菓子です。そんな、カーサムーチを、昔っぽくかつ現代っぽくでーじ上等な感じに仕立ててみました。
さて、どんな感じに仕上がったでしょうか?
沖縄の餅文化の歴史
沖縄の餅文化(ムーチ)を追いかけるのはなかなか困難なものです。琉球菓子は全般的に資料が少ないのですが、ムーチに関しては、餅という漢字がさらに複雑なお話にしています。
そもそも餅を神様に供えるという餅文化は日本が発祥となっております。中国にはお餅を神様に供えるという習慣はありません。いや、そもそも餅の概念が違います。
日本で生まれた餅は中国では「麻糬」と呼ばれています。このことを知っていた人はかなりの餅通ですね。
では、中国の餅とは何でしょうか?中国では餅は「ピン(bǐng)」と発音します。Google翻訳で、中国語の餅を日本語に訳すと「パイ」と表示されます。だいぶ、想像できてきましたでしょうか?中国からやってきた餅で有名なのものには月餅(げっぺい)があります。月餅を食べるとわかりますが、中国のお餅は小麦粉由来なんですね。沖縄では光餅(クンペン)も有名な小麦粉を使ったお菓子です。
さらに、この状況に「糕」という中国のお菓子の考え方が流れ込んでいます。そうです、弊社でも製造をしている「金楚糕(ちんすこう)」の糕です。ペイストリーのことですが、定義上、穀物粉を使っていればいいので、もち粉を使うと「糕」に分類されることもしばしば出てきます。
ね、複雑な話になってきたでしょ。
このことを頭に入れて、琉球国由来記の鬼餅伝説を読むと現在売られているカーサムーチに少し違和感を感じることになります。この部分は、伊波普猷著の琉球国由来記よりも、手書きされた原文を読んでみないとはっきりしないので、もうちょっと調査のお時間をいただくことと致します。
現時点で沖縄の餅の歴史ではっきりしているのは、日本的な鏡餅は市民権をえられずに、戦前戦後は道明寺糒(ほしい)に近い、石臼でもち米をひき、蒸したものでした。そして、1988年前後を境にもち粉に推移をしていき、団子化が始まり、現在は砂糖類をたくさん添加したもちもち飴玉化が進行しています。
道明寺糒に近かいもち米であったのにはきちんとした理由があります。それは、沖縄に根付いていた石臼文化の影響が大きいからです。実際に、中村家住宅をはじめとする沖縄の古民家の展示場を何件か訪れてみましたが、日本の搗き餅に必要な独特の杵はなく、どこも脱穀用の縦長の杵でしたし、石臼の数はものすごく多かったです。
また昔、餅屋の経営者にこんな言葉を教えていただきました。「餅で儲けたいなら水をたくさん入れろ」
日本で生まれた鏡餅は水分が40%前後でカビは表面からついていきますが、現在の沖縄の餅はもち粉の70%−100%の水をいれるので内部にもカビが繁殖していきます。
道明寺糒の状態で、水をたくさん入れるのは至難の業で、それこそ3日ほど水につける必要が出てくると思うので、もち粉に変更して以降、餅に水を沢山入れれば儲かるということで、沖縄の餅文化は柔らか餅になっていき、餅は急速に退化を始めたのではないかと推測できるわけです。
ちなみに、日本の餅文化も衰退が激しく、今では年に数回使われる程度になっています。しかし、沖縄とはちがい餅そのものは退化どころか進化をしています。
沖縄の場合は、たくさんの水を入れても「まるさ」を保つために添加物を用います。これは、文化よりも実利が大事という形而下的な発想です。
最近のうちゃぬくは「ぺちゃんこ」だなぁと思ったは、文化を観る目がございます、
対して、日本では神様が舞い降りる純粋なものという、精神的な部分を大事にする形而上的な発想なので、水ともち米のみの純度の高い餅を基本とし、鏡餅が餅文化の中枢にあり続けています。
形而上という妄想はもち米の品種改良を行うことで、もち米が持つ苦味を、もち米が出す甘味で打ち消し、砂糖を使わなくても美味しいお餅を作り出してきました。色も精神も純白を突き通すためもの努力ですね。
そんなこんなを加味しながら、歴史的カーサムーチーを造ってみました。(長い前振りでごめんさい。)
歴史的カーサムーチーの作り方
歴史的と言っても、歴史を忠実に再現したという意味ではなく、歴史の解釈をした上で新しい物を提案すると理解していただければと思います。
琉球国由来記の鬼餅伝説には「米で作った餅」と出てきますが、先にも書きましたように、餅の定義によって解釈が代わります。まず、米が、うるち米なのかもち米なのか?餅が小麦粉の餅なのか、もち米の餅なのか?もち米の餅なら、なぜ、米で作ったとわざわざ書くのか?
ということもあり、「糕」と書かれていない以上粉末を使っていないだろうと想像し、思い切ってこんな感じに解釈をしてみました。
「米粒のまま作ったもち米の餅」。これだと、合理的で沖縄っぽくないですか?
それでは、作り方です。
1.もち米を水でとぎ、とぎ汁が透明になるまでとぐ。
2.もち米と同じ高さになるぐらいの水を入れ、1時間から8時間、もち米に水を吸わせます。
3.月桃の葉っぱを水洗いし、水気をとった後、泡盛で葉の全体をさっと拭きます。
4.120度から140度程度の熱に耐えれるタッパーに3の月桃の葉を敷き、その上に2のもち米をばらばらっといれます。
5.タッパーごと蒸し器に入れ(タッパーの蓋はしない)、15分から20分蒸します。
6.はい、出来上がり。
7.かつおのふりかけをもち米にかけて召し上がれ
これは、でーじじょうとうなカーサムーチに仕上がりました。
国産もち米のもつ甘みを水蒸気が引き出し、月桃香りがほんのりともち米にもうつっていてくどくありません。そこにカツオとみりんで作られた、ふりかけがよく合うのですが、もちもちっとした中にザクッとしたふりかけの食感がよくあいます。
ポイントは、耐熱タッパーに入れるところ。これにより、月桃が蒸され過ぎず、程よい月桃の香りがもち米にも移り、昔ながらのカーサムーチを今風の味わいで食べれます。
だたし、カーサを蒸した時にでる排汁がないので、厄除けとしてまくことは出来ません。その分はシーサーと手洗いとアルコール消毒とマスクに頑張ってもらってください。ここも、現代風。
飲食店やカフェの皆さんが、このカーサムーチを、ランチやスイーツで提供してくれたら嬉しいなぁ。食べに行くので、コメント下さいね。楽しみにしてます。
コメント
こんにちは。
てぃーだ編集部です。
餅の歴史について知りませんでしたのでとても勉強になりました。
また、カーサムーチーがとっても美味しそうですね!
月桃の香りといい想像すると食べてみたい!と思いました。
素敵な記事を書いていただきありがとうございます。
こちらの記事をてぃーだニュースにて取り上げさせていただきたいと思います。
これからもてぃーだブログをよろしくお願いいたします。
てぃーだ編集部さん、コメントありがとうございます。
ご自由にご利用ください。